体力つけないと
演劇1
演劇2
監督 想田和弘
今の、チョット待って、もう少し遅く。
決して大きく怒鳴るわけではない平田オリザの声が稽古場に響き、再び繰り返されるシーン。
テープを巻き戻したみたいなように同じ調子で始まる俳優たちの演技。
今度は、チョット待ってがさっきよりも、心持ち遅くなっている。
私だけ、をもう少しゆっくり。
再び響く平田オリザの声で、稽古はシーンの最初から再びやり直し。
そこで、左を向くのをもうちょっと遅く。
再び、シーンの最初から。
俳優スゲー。演劇の稽古スゲー。
演劇1で繰り返し映し出される劇団の稽古風景を見て、ニーチェの永劫回帰を思い出していました。
同じシーンをこれでもかこれでもかと繰り返し、その度、少しだけ平田オリザの理想に近づいて行く。
平田オリザの俳優に対する注文は、機械的な注文に終始します。
ーそのセリフもう少し早く。
シーンの最初からやり直し。
ーそこで振り向くのもうワンテンポ遅く。
シーンの最初からからやり直し。
ー「自分のこと」をもう少しゆっくり。
シーンの最初からやり直し。
演劇1は平田オリザと彼が主催するアゴラ青年団という劇団の活動を追ってゆきます。
ナレーションは一切なく、稽古するシーンだとか、平田オリザがワークショップで指導するシーンや彼が劇団の主催として行う雑務、領収書の取りまとめだとか、取材での受け答えなど、それに劇団が地方に公演に行った際の舞台の設営作業などが映し出されます。
演劇1は劇団を主催するということと、演劇を開催することを中心として進みます。
演劇2では、平田オリザの活動に焦点があたります。
鳥取の中学校で、ワークショップを開いたり、同じく鳥取で開催される演劇祭に出展したり、あるいは、民主党の議員たちと会食したり、フランスで公演を行ったり、大阪でロボットを使用した演劇を作ったり、雑誌の取材を受けたり、などなどなど。
はっきり言って、凄まじい人だなと思いました。
体力が、ハンパじゃない。
しかも、こんなに忙しくしているのに、彼は全く不機嫌にならない。
どうしたことか、いつも、上機嫌そうに笑っている。
鳥取の市長が、(いかにも人の良い地方の偉いさんみたいな感じで、ちょっと好きになったんだけど)、酔っ払って絡んできても、えぇ…そうですね、なんて辟易しながらも、それでも、でもね、夕張なんかでもそうなんですけど、芸術で地域の振興を行うことができるんですよ、という語り口は決して政治家を軽蔑した風でも、相手を軽んじている風でもなく、にこやかないつもの平田オリザ調。
演劇1演劇2を見ていて、マイケル・ムーアの「ボーリングフォーコロンバイン」を思い出しました。
「ボーリングフォーコロンバイン」を見た時、マイケル・ムーア、スゲー。体力ハンパねぇー!と思ったのですが、それと同じものを感じました。
平田オリザという、小さな体の人物の中に秘められたそこしれない強さ、しなやかさ。
演劇1演劇2はかなりオススメです。
合わせて5時間超ですが、心地よい時間でした。
演劇2を見終わったのが土曜日の夜で、東京は土砂降りの雨が降っていたのですが、何か幸せな気分になっていました。
白夜も見てきました。
日曜日の午前10時。定員100人ほどの劇場は超満員。立ち見の人までいました。
確かに、男がテープレコーダーに何やらつぶやいていました。
ドストエフスキーの原作に意外に忠実でした。
主人公の男が原作では、どうしようもない妄想癖だったのが、映画ではどうしようもないストーカー的な感じ、街をウロついて、可愛い女の子がいるとあとをつけちゃったり、相手の女の子(マルタ)を好きになっちゃって、彼女の名前をテープレコーダーに向けて、「マルタ、マルタ、マルタ、マルタ、うーん、マルタ!」と録音したものをバスの中で再生したり、全くダメな奴になっていて(最初はクスクス笑っていた後ろの女の子が明らかに引いていましたよ)、あー、なるほど、と妙に感心しました。
マルタが可愛かった(彼女に関しては必然性がよくわからないヌードシーンもあって、素晴らしいですね)。
白夜も面白くて、良かったです。
今週は、んな感じです。
来週は、どうしましょう、リヒテンシュタイン展かな。あと、ワタリウム美術館。坂口恭平さんの展覧会に行きたいと思います。
映画もみたいです。
んでは
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