「敗北」 前野狼騎さん
山気とも花の冷えとも峡の宿 狼騎
先日我が句会で吟行があった。場所は犀川上流の宿だったが、そこは昔、我々が若かりし頃、吟行した鄙びた隣の宿で、当時その鄙びた宿で凱風先生が酒をしこたま飲んで大声で議論して、宿の主人から「静かにしてください!」と厳しく注意された思い出の場所だ。今年、金沢の春は気候が悪く、春寒の日が続いた。山間地はかなり寒かった。
話しは変わるが、このところ、オレは何十年かぶりに芥川龍之介を読んでいる。「地獄変」など前期の短編も素晴らしいが、後期の作品に大いに納得してしまう自分が怖くなる。芥川の主題は「敗北」だ。自殺した彼にとって敗北とは何だっのかのか。オレにとって敗北とは何なのか。「敗北」を考えて見るのも面白い。人間はいづれ死ぬのだから、人生楽しく過ごせば良いのではという思考が敗北なのではないのか?オレも還暦を過ぎると気が萎えてくる。弱ったものだ。
ところで、A首相が戦後70年の談話で何を言うかは知らないが、日本という国は、明治維新以後、アジア諸国に対して加害者であったことは紛れもない真実だ。この事は100年後も200年後も変わることはない。オレが思うに、どんな歴史学の評論書よりも、やはり小説家の想像力から得るインパクトは凄いと思う。あの戦争の深層を思い知る小説をオレは四つ程知っている。
「神聖喜劇」大西巨人
「俘虜記」大岡昇平
「生きてゐる兵隊」石川達三
「めぐりくる春」粱石日
日本と日本人はこれから驚く程変って行くのだろう。
しかしマートンは打たんわ!
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おたよりありがとうございました。
今日午前中はいいお天気でした。(夕刻から雨でしたが)
ひさしぶりに外に出るとアパートの前の空き地にイチハツの花が咲いていました。
そういえば、あのときは、宿の前に石楠花が咲いておりましたなあ。
私、芥川の後期のものは暗いので、高校以来、一度しか読み返したことがありません。
今日は、木山捷平の短編を読んでおりました。
芥川というて、私が思い出すのは、小説ではなく、「戯れに」と題されたこんな四行詩です。
汝と住むべくは下町の
水どろは青き溝づたい
汝が洗場の往き来には
昼も鳴きつる蚊を聞かん
文字通り、ほんの戯れ歌なのでしょうが、昔から好きで、何かの折に、ひょいと口を衝いては出てきます。
そして、なんとなく、ニコニコする。
何の意味もないのですが。
そういえば、誰の言葉でしたか、こんなのがありました。
一輪車に乗るための一番大切な秘訣は遠くを見ること。
そうすればバランスがとれる。
人生は一輪車ではないのかもしれませんが・・・。
すてぱん
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