「金沢城にクマ出没!」 前野狼騎さん
冬薔薇の一輪にして地を統べる
木枯しや時代の愚挙を繰り返す
忘れ物見つけたように帰り花
今度の特定秘密保護法の成立に際して、俳人達の動きは兜太らごく一部の俳人を除いて概ね鈍かったように思う。
それにしても、昭和16年の治安維持法の改定をきっかけにして、世情の息苦しさを俳句に詠んだ事を理由に28人もの俳人が検挙され、その内10人が起訴、投獄されたという歴史的事実があるにもかかわらずだ。
たかが俳句なのに!
中には、「枯菊」という冬の季語を使った事が「天皇陛下の御紋を枯らすとは何事ぞ」と言う理由で逮捕された俳人もいた。
当時は画家や小説家も戦争遂行の為の宣伝活動に利用された。
日本人はまた戦前と同じ間違いを繰り返すのだろうか?
狼騎
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おたよりありがとうございます。
狼騎氏の句の、忘れ物を見つけたごとき「帰り花」や、ただ一輪のみ地を統べるかのごとき「冬の薔薇」に安倍政権への寓意を読みとるのは、読み過ぎなのでしょうか。
けれども、そんな揶揄をも裏に読みたくなってきます。
なにせ、だれもそんなものが出てくるなんて思いもしていなかった街の真ん中の「金沢城にクマ出没!」がタイトルなのですから。
みな突然、街なかに出現したクマに驚いたふりをしていますが、たぶん予兆はあったはずです。
私たちの街にどんな荒々しいクマがわがもの顔に歩きはじめるのでしょう。
「戦後レジームからの脱却」という安倍晋三の唱えるスローガンは、その意味するところを素直に読めばあきらかに時代を再び「戦前」に戻すことを意図しています。
そしてこの「戦前」とは、彼の頭の中において理想化された昭和における「戦前」を念頭にしているに違いありません。
けれども、その「戦前」とは、一方で間違いなく今の時代を「《将来起こり得る戦争》の前の時代」にすることをも意味しているはずです。
内閣支持率が低下しはじめてきた今の日本の安倍政権と、国民間に格差への不満がくすぶり続ける習近平の中国は、尖閣諸島を格好の舞台としながら、ともに「外に敵を作る」ことに、いわば共通の利害を持っています。
そんな両国にやがて何が起きようとしているのか、それを危惧せざるをえません。
1925年の治安維持法の制定から六年で、満州事変が起き、時代は戦争へと傾いていきました。
「特定秘密保護法」が成立した2013年の12月6日が、そんな「戦前」の始まりであった、などとならないようにしなければなりません。
冬に入る素足に踏むや裁鋏
すてぱん
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