「ルナの記憶」 北川司さん
昔、ルナという名の煙草がありました。
淡い黄色の表装は上品で、ニコチンも軽そうな感じを出していた。
同じ黄色でもピースのは濃かった。
今思うと毒が強い感じ、と言える。
その頃(20代)はそのニコチン最強のピースやらそれより少し弱いハイライトをよく吸っていたのだが、切らした時に父親の買い置きのルナを失敬していた。
父親は何も言わなかったが、ルナが家でなくなりそうになると、使いにやらされた。
大抵は父親が仕事帰りに買ってくるのだが。
まあ、味は当時はいただけなかった。
たるくて。
今、ルナが月である、と通信にあるのを見て、俺は知ってるけどどうして知ったのかが曖昧であることに気付いた。
煙草がらみであることは間違いない。
父親に聞いたような気もする。
自分で調べたようにも思える。
父親に聞いたとした場合、彼ならさらっと答えただろう。
しかしその記憶がはっきりしないのがもどかしい。
便りなき人の声して春惜しむ
追伸:
「我汝を愛す」のロシア語は忘れました。
一度は記憶した記憶、はある。
・
おたよりありがとうございます。
それから、すてきな俳句も。
昨日の通信に書いた「想像ラジオ」という小説を総括したような俳句のように読みました。
句会ならまちがいなく「天」に推してしまいそうです。
よい句だと思いました。
「想像ラジオ」は、来週末、邑井氏が来られるそうなので、彼に渡します。
たぶん、帰路読み終えた邑井氏から司氏にも回っていくと思います。
また感想など、たのしみにしております。
すてぱん
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