風邪の効用
鼻水が出るというのは空気の中にあるいろいろな悪いものに対する一種の抵抗力の現われですから、鼻水などが出るようなら、まあ体中が敏感であると言えるわけです。
― 野口晴哉 『風邪の効用』 ―
昨日から鼻水が出る。
風邪をひいたらしい。
風邪といっても鼻水が出るばかりで、熱も頭痛もするわけじゃないから本は読める。
ものも考えられる。
この前のヤギコの風邪の方がずっと深刻だった。
とはいえ風邪は風邪である。
というので、首に襟巻きをして、コーヒーの代わりに生姜をすりおろした甘い紅茶ばかり飲んでいたら、いつの間にか鼻水も出なくなった。
治ったらしい。
丈夫である。
そう言えば、と思いだして、本棚の奥から『風邪の効用』というのを引っ張り出して読み返してみる。
著者の野口晴哉は整体というのを始めた人らしい。
その人によれば、風邪というのは病気というより、風邪自体が体が自分で行う治療行為ではあるまいか、という。
というのも、風邪を引くと体はその弾力を回復するようにできているものだから、という。
たとえば血管なども弛緩するらしく、脳溢血などで倒れる人は、ある時期から風邪を引かなくなっているそうだ。
どうやら、人間、風邪を引いているうちが華らしい。
風邪を引かなくなると体が弾力を取り戻せなくなって、バタッと倒れるのを待つしかなくなるらしい。
風邪とか下痢とかいうのは、一番体を保つのに重要というより、軽いうちに何度もやると丈夫になる体のはたらき
なんだそうである。
下痢も風邪もあんまりありがたくないが、そう言われればそんな気もする。
だから、風邪という体自身の治癒行為を無理に中断するような対処はいけないそうだ。
治すより、治るのを後押しする、というのがいいらしい。
まあ、それについて、この本には背骨のどこを押せばいいとか、風呂の入り方とか書いてあるんだが、独り者は自分で背骨は押せないからなあ。
でもまあ、〈風邪の効用〉の第一は、自分の体を大事にしなくちゃ、と、のんき者にも気づかせてくれることでしょう。
というわけで、鼻水で年が始まるのも、これまた、なかなかよい一年の始まり方です。
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