あゝ冬よ来い、冬よ来い
ニュース番組の最後の全国のお天気のコーナーでは、北の北海道から南の沖縄まで、列島全体の明日の天気が日本地図と一緒に示される。我々は別々の場所に住みながらも同じニュースを見ている。本来であれば、自分の地域のことだけ知ればいいのに、ニュースはいちいち日本全国のお天気を知らせてくれる。これは、北海道から沖縄までが日本であるという帰属意識を確認する作業としてとらえることができる。
― 速水健朗 『ラーメンと愛国』 ―
寒いなあ、12月。
明日も寒いよ、と9時のニュースのお天気のお姉さんが言っていた。
千葉の最高気温は8度らしい。
寒いなあ。
それなのに、昔の生徒から
やっと寒くなりましたね!
とメールが届いていた。
そんなところにオドロキマークなんて入れて、なんだかうれしそうだ。
こっちは部屋の中で襟巻き巻いてるって言うのに、この子はどこかニコニコしている。
でも、それはきっと正しいことなんだ。
こんなわたしだって下のような高村光太郎の詩を読んで気合が入っていた昔もあったんだもの。
冬が来た 高村光太郎
きっぱりと冬が来た
八つ手の白い花も消え
公孫樹の木も箒になつた
キリキリともみ込むうやうな冬が来た
人にいやがられる冬
草木に背かれ、虫類に逃げられる冬
冬よ
僕に来い、僕に来い
僕は冬の力、冬は僕の餌食だ
しみ透れ、つきぬけ
火事を出せ、雪で埋めろ
刃物のやうな冬が来た
わたしもまたこんなふうに冬の到来をよろこべたら思えたらすごいけれど、もうなかなかそうはなれないな。
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