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秋の雨

 

 すべての書物は伝説である。定かなものは何物も記されてはゐない。俺達が刻々変わって行くにつれて刻々育って行く生き物だ。

 

     ― 小林秀雄 「Xへの手紙」 ―

 

 

 夜になって雨が降り出した。
 読んでいた本から時折ふと意識が離れると雨の音が聞こえてくる――それぐらいの雨だ。
 なぜだか、心がほっとしているのに気づく。
 しばらくは、そのまま雨の音を聴いている。
 それから、また本に向かう。

 ちっともねむくない。
 秋の夜。
 コーヒーはとっくにもう冷めてしまった。

 もう朝の5時。
 そろそろ寝ようと思う。
 雨がすこし強くなったようだ。

 


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