凱風舎
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よい時間

 

 

 ひとりの男が
 猫色の帽子をかぶって
 魚を釣っている

 

    ― 西脇順三郎 「えてるにたす」 ―

 

 昨日干した洗濯物、取り込むのを忘れていたら、夜のうちに雨が降ったらしく、朝、また濡れていたので、笑ってしまった。
 でも、今日もいいお天気だったから、ちゃんと乾いてよかった。

 中間試験が近いというので、昨日も今日も昼間子供たちが来ていた。
 自習。
 子供たちは家にいるより勉強ができる気になれるらしい。
 椅子に座って本を読んでいると、ときどきだれかがわからないところを質問する。
 それから、ちょっとしたくすくす笑い。
 しばらく静かだと、きまぐれなヤギコがひょいと机の上にのって、だれかのノートのそばに正座したりする。
 
 試験は近いのに部屋はどこかのんびりした気分。
 それはこのおだやかな十月のせいなのだろうか。
 生徒もわたしもなんだかくつろいでいる。
 一人一人、それぞれやるべきことがあることは、何もすることがないよりずっといいのだ。
 そのやるべきことは、別に強制されてるわけじゃないし、一人一人違うんだが、たぶんそれもいいのだ。
 帰ります、と言えばいつでも帰れるんだが、でも、みな、なんとなく部屋にいる。(特に女の子は)
 そんな午後。
 ワルクナイでしょ?
 
 明日は、女の子たちが早く来て、わたしの部屋を
  ちょーキレイ
にしてくれるらしいです。
 たのしみです。

 こんな秋の午後を過ごしているわたしは、ひょっとしたら、詩の中で猫色の帽子をかぶって釣糸を垂れている男と同じなのかもしれません。
 ところで、あなた、〈猫色〉ってどんな色だと思います?

 

 

 


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