凱風舎
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おだやかな秋

 

 誰も出発しないところから、だれも向かっていかないところへ向かう道があればいいのだが。

 

       ― フェルナンド・ペソア 『不安の書』 (高橋都彦 訳) ―

 

 おだやかな秋。
 今日も古墳公園に行く。
 公園にはだれもいない。
 ベンチに座ると鳥の声。
 ピーヨ。ピーヨ。
 ヒヨドリ。
 持って来た本を開く。
 まだ青い桜の葉を通して日がページにゆらゆら揺れるが、もう夏の日ざしほどまぶしくはない。
 (そうそう、まだ、蚊がいるから、リュックに虫よけスプレーは必携だ。)

 それにしても、人のいない公園は、本当に時間が流れない。
 ときおりの風に枝が揺れ、早くも黄色く枯れた欅の木は葉を落としたりするが、またもとの静かな公園になる。
 たぶん、本当は時間なんてないのだ。
 何にも要らない。


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