十八歳
わたしはわたしの人生をなんとかしなければ。発車させなければ。もう十八歳なのだ。
― 桜庭一樹 『少女七竈と七人の可愛そうな大人』 ―
土曜日の昼間、ひさしぶりに麻穂、梨穂、理沙の高三娘トリオがやって来た。
話によれば麻穂君は大丈夫だったらしいが、あとの二人は「指定校推薦」というのをもらえなかったらしい。
わたしはこの頃の大学入試の仕組みについてはほとんどわからないのだが、「指定校推薦」というのをもらえればほとんど100%合格することになっているらしい。
で、麻穂君は安心。
けれど、残りの二人は、「AO入試」(どんなものかわしにはよくわからん)とか「小論文入試」という奴を目指すらしい。
で、彼女たちが目指しているという大学の去年の小論文の題を見ると、こんなのが並んでた。
●職に就かない若者が増えていると言われているが、その原因とその対策について述べよ。
●中国の経済発展と日本へのその影響を述べよ。
●子育て支援の必要性とその具体策について書きなさい。
すごいなあ!
わたし、うなってしまいました。
これを読んでくれている諸兄諸姉よ、あなた、こんなの、ちゃんと書けますか。
ましてや、これまでの二年半の高校生活のほとんどを部活に費やしてきて、世の中の動きなぞまるで知らぬ気にのほほんと過ごしてきた十七・八の娘に書けましょうか。
たいへんだなあ!
それでも、彼女たちはどこかの大学生になるのでしょう。
まちがいなく諸兄諸姉の時代よりどこかの大学生になること自体はずっとやさしい時代になっているんですから。
けれど、時代は変わっても、十八歳という年が、庇護され保護されていた子供時代に別れを告げ、自らの責任で自分の人生をつくり上げていく、その最初の大きな選択をしなければならない年であることはちっとも変わっていない。
十八歳だったあなたと同じ悩みを彼女たちも抱えている。
今日引用した部分の少しあとで桜庭一樹はこんなことを書いている。
「どこからか、声が聞こえるの。もう、そんな季節だ、って。おまえも、この季節を、負けずに走りぬかなきゃ、って。でも、どこにむかって走るの?わたしには夢がない。誰でも知っているつまらないことしか知らない。わたしには夢がない。たとえみつけても、オリジナリティがない。かんばせも、ほぅら、こんなに平凡で」
(中略)
とくべつでない自分と。とくべつすぎる自分と。みんな、自分自身とむきあって、折り合いながら、怒涛のように変化していく季節なのだ。
やっぱり、彼女の小説はせつないなあ。
十八歳はせつないなあ。
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