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未成年

 未成年の状態とは、他人の指示を仰がなければ自分の理性を使うことができないということである。人間が未成年の状態にあるのは理性がないからではなく、他人の指示を仰がないと、自分の理性を使う決意も勇気ももてないからなのだ。だから人間はみずからの責任において、未成年の状態にとどまっていることになる。

               - カント 『啓蒙とは何か』 ―   

 「なんだよ、テラニシのやつ、どーせヒマなんだから毎日《通信》書けよ。」
などと言ってまで、この通信を心待ちにしている人がどこぞにいるとは思わないが、まあ、私が誰にもましてヒマであることはまぎれもない事実である。コーヒー飲みながら朝から新聞や本を読み散らして、傍らの猫の頭をポンポコ叩いたりしているだけである。にもかかわらず、飲み会でもなく、二日酔いでもないのに、昨日通信を書けなかったには、わけがある。
 まあ、大したわけでもないんですが。
 
 昨日、大きな箱が届いたのである。みんなからの心のこもった今回の誕生祝い。
 箱の腹には
   《コピー/プリンタ/カラースキャナ/ネットワーク対応》
と書いてある。。(スゴイでしょ!) 
 しかし、実は私、この中で《コピー》以外何をするものなのかよくわからない。
  なんだよ、バカだねえ!
などと言われても、事実なんだからしかたがない。わからんものはわからんし、知らんものは知らん。そのうえ、箱を開けて覗いてみると何やらコードや何かが入っていて、たいそうメンドくさそうである。
 で、私、思ったものです。
  こういうものは、俊ちゃんに何とかしてもらおう。
 実は、私、少なくともここ15年、自分で何かを組み立てたり、配線したり、設定したりということをしたことがない。そんなことは全部、生徒の誰か(ほとんど俊ちゃん)に任せてしまってた。
 まして、何かを計画したり、段取りを組んだり、手配をしたりとなると、これはもう、30年以上やったこともない。
 みんな人任せ。
 今回もそれで行こうと思ってました。慣れてますからね、人にやってもらうことに。
 でもね、デカイ箱です。テーブルの半分以上の大きさがある。場所ふさぎ。それに、俊ちゃんはこないだからインフルエンザだという。
   やるしかないかぁ。
珍しくそう思ったんです。
 というわけで、始めたんですが、慣れないと、ダメですね、説明書に書いてあることがどうもすっきり頭に入ってこない。
 いつもは子供たちに
 「あのなあ、人間、読解力だよ、読解力。リテラシーだ!ちなみに、わしはテラニシ―だけど・・・」
なんぞ、わけのわからない能書きを垂れてるんですがねえ。全然わかっていない。読解力、ゼロ。
 その上の、眼高手低。われながら、感心するほど、トロい。
 それでも、なんとか線をつないで、スイッチを入れれば,うぃーん、と音を立てるところまできた。夜更けでした。
  エライ!
 まあ、要は、これまで私が「生来の無精」で済ませてきたことのほとんどは、実は私が、ただ単に、謹厳なるカント氏のいうところの、甘ったれた《未成年》のままだったってことなんですな。
 俊ちゃんをはじめとする皆々さま、ご安心召されよ。ひょっとするとテラは、遅まきながらついにその甘ったれた《未成年期》を脱したのかもしれませんぜ。
 もっとも、相変わらず相当ツカエマセンが。
 そのうえ、実は、この器械、何にどう使うものなのかは、イマイチこの男はよくわかってはいないようなのですが・・・。


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