心臓
不可思議は天に二日(にじつ)のあるよりもわが体(たい)に鳴る三つの心臓
与謝野晶子
俊ちゃんのところの第四子の出産予定日は来月のはじめとか。
おなかもずいぶん大きいのでしょう。
で、今日は与謝野晶子の
みんな空に二つ太陽があったりしたら「不思議だ」というかもしれないけれど、
そんなことより、今私の体の中に三つの心臓が動いているのよ、不思議でしょ。
という歌。
当時、晶子のおなかの中には双子の女の子がいたのです。
だから、妊娠中の彼女の体の中には自分のと含めて三つの心臓が動いているというのです。
私、はじめてこの歌を読んだとき、そんなふうに妊娠期間を思ったことなんてなかったから、というか、そもそも妊娠ということがどういうことなのかあんまりよく考えてみたこともなかったから、
なるほどそういうことなのか!
と、ひどくびっくりしたことを覚えている。
双子を産む人はもちろんそんなに多くはないけれど、でも、考えてみたら、どの女の人も、母親になるときには、みな自分の体の中に二つ以上の心臓が動いている期間をもつんですものね。
今、俊ちゃんの奥さんの体の中にも二つの心臓が動いている。
すごいなあ!
そんなこと、逆立ちしたって男にはできはしない。
男は死ぬまでずっと自分の心臓一つで生きてることがあたり前だと思っている。
たぶん、そんな男たちのものの考え方や見方は、体の中に二つ以上の心臓が動くことを実感する女の人のそれとまるで違ったものになってしまうんでしょうね。
ところで、五男六女を産んだ与謝野晶子は、夫、与謝野寛(鉄幹)が亡くなったとき、こんな歌を歌っています。
筆硯煙草を子等は棺に入る名のりがたかり我を愛(め)できと
筆や硯(すずり)、それにタバコなど彼らの父親が日頃愛していたと思うものを
子どもたちは棺の中に納めています。
でもね、これは言えないけれど、この人が本当に愛し大事にしていたのは実はこの私だったのよ。
そんな歌です。
私、この歌、好きです。
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