天敵
ソクラテスの言ったことは正しい。こっちが逃げなければ破れない敵といふものがある。それを相手にしては、臆病が賢策となり、勇気が敗北の原因となる。凡て正面からの闘争は壊滅に終わる。
― 『アミエルの日記』 (河野与一 訳) ―
金沢の兼六園の中に日本武尊(ヤマトタケルノミコト)の大きな銅像がある。
その台座の石組の中にヘビ・カエル・ナメクジに似た石が入っている。
なんで、そんなものが入っているかと云うと。
(と、以下は私たちが小学生の頃兼六園にいた観光ガイドのお姉さんのお話。)
ヘビ・カエル・ナメクジはいわゆる「三すくみ」なんです。
カエルはナメクジを食べたいのだが、ナメクジを食べるとヘビが襲ってくる。
ヘビはカエルを食べたいのだが、そうするとナメクジのねばねば攻撃で溶かされてしまう!
ナメクジはヘビを襲いたいが、そうすれば自分がカエルに食べられてしまう。
というわけで、一所に会したこの三匹はどいつも身動きが取れない。
この三匹が動けない結果、震度6の地震が来ようが台座は動かず、銅像も倒れない。
・・・という、マンガみたいなおはなしを、夏休み、セミを捕る網を持った小学生のぼくは団体旅行の観光客の横で聞いていたんです。(当時兼六園はただで入れました)
子供心にもナメクジがヘビに勝てるなんて怪しいと思ってましたが、世に天敵というものがあることを聞いたはじめです。
とまあ、誰にだって天敵というものはあります。
睨まれたら身動きとれないものってあるんです。
山田さんのはどうやらイラガの幼虫らしいですが、私のそれは姉です。
ヘビににらまれたカエル。
アネににらまれたテラ。
まったく手も足も出ない。
いはんや、鼻からタバコの煙をや!
その姉と今回の帰省はまる二日一緒でした。
足かけ三日、まる二日です。
一緒に犀川で花火まで観に行く始末。
死ぬかと思いました。
というわけで、友人の誰とも会わず、なにやら精神修養施設に入ったような帰省でした。
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