凱風舎
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驚くべき詩

 

   あの

             藤富保男

 

 あなたも笑ったし
 僕も笑わなかった

 のであった
 のであったり
 世界は何を待っているか
 と云う人がいて
 何だかさっぱり分からない人もいて

 そして
 待っていたのである

 のでなかったり
 のであったりした

 のであった

 ところで
 実際は
 極端に
 巨大に
 その上なんでもなく
 横か
 縦を振り向いて
 笑ってしまった

 そして
 そうであった
 とか
 ねじった
 とか
 なんだか

 そうではないライオン
 である

 ということにしてしまった

 

 なんですか、これは!
 と、思うでしょ?
 (この詩は絶対高校の国語の教科書に載せるべきだと思うんだが、まだどの教科書にも載ってない。)

 私、この詩ほど、読んで、ビックリ、した詩、はなかった。
 のであったり、した。
 (大学生の頃『言語空間の探検』という本に載っていたのを初めて読んだのだ。)
 
 たとえば。
 まず最初の二行からまるで日本語の文脈の予想を裏切る。
 (これで驚かなかったら日本人としてどうかしている!)
 もちろん、それから先だって、まるでわけがわからない。
 わからないから、読み返す。
 読み返してもわからない。
 わからないけど、でも、なんだか、笑ってしまう。
 (笑わなかった人は、今度は声に出してゆっくりと朗読してごらんなさい。
  絶対笑う!) 
 そうやって笑いながら、実はぼくたちは、日本語の約束通りにしかものを考えていないふだんの自分に揺さぶりをかけられるのだ。
 すごい詩だなあ!

 (意味なんて、みんな《思いこみ》なんだ。
  日本語が勝手にそう思わせてるんだ。)

 ところで、私の持っている『藤富保男詩集』にはなぜか著者のサインが入っていたりするのであったりするのである。
 というわけで、私は藤富保男さんのファンなのである。


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