何にもいらない
不可能なものに触れるためには、可能なものをやりとげておかねばならない。
― シモ―ヌ・ヴェイユ 『重力と恩寵』 ( 田辺保 訳) ―
静かだ。
誰も来ない休日の窓から六月の風が入ってくる。
ヤギコは椅子に眠っている。
こんな夜、ヴェイユを開いたのはよいことだった。
この人の本を読むたびにつくづく自分がいかに愚劣であるかがいつもはっきり見えてくる。
彼女のように厳しくは生きられそうもないが、読めば必ず善く生きねばと思う。
それはとても良いことだ。
今夜は実にいい六月の夜だ。
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