《徒然草》 第五十七段
人の語り出でたる歌物語の、歌のわろきこそ、本意なけれ。
すこしその道知らん人は、いみじと思ひては語らじ。
すべて、いとも知らぬ道の物語したる、かたはらいたく、聞きにくし。
人が語りだした歌物語で、肝心のその和歌がよくないのは、がっかりする。
すこしでも歌のことが分かっている人は、それをすばらしいと思って話すなんてことはないだろう。
それが何事であっても、自分がよくしらない分野のことをとくとくと話すのは、はたで聞いているのもにがにがしく、耳をふさぎたくなる。
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別にこれは どこぞの国の首相Aの英語の演説の話ではありませんが、それにかぎらず、世に「かたはらいたき」ことは多々あるものでございます。
( ご存知とは思いますが一応説明しておきますと、
「かたはらいたし」
とは、昔の時代劇の映画なんかで侍が口走っていた、
「片腹痛いわ、わっはっは!」
という笑止千万の意味ではなく、漢字で書けば
「傍ら痛し」。
すなわち、傍らにいるのがつらい、という意味でございます。
つまりは、傍らにいる者が、思わず赤面してしまって、いたたまれなくなるくらいみっとむない言動に対する否定的評価を表す語でございます)
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