凱風舎
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15×22×6

 

なつかしく日が当たりくる枯木かな

 

                     高柳重信

 

高校は試験期間である。
昼過ぎ、串田君が学校帰りにやって来る。
「生物、死んだぁ!」
といいながら、机の前に座るやいなやカバンから弁当箱を取り出す。
デカイ。

弁当箱、というか、要はでっかいタッパーである。
「すげえなあ!」
と言うと、
「部活のある日はもっとでかいのに入ってますよ」
と言って、タッパーを持ちあげて裏に書いてある容量を見ている。
「1.4Lか。ふだんは2.3Lのやつです」
という。
あんた、2.3Lって、あんた!
みなさん、ちょいと2 L入りのペットボトルを想像してみてくださいな。
あれよりデカイんですぜ。
まあ、今日はその6掛けほどの、1.4L。
それでもデカイ。

その蓋を開けると、びっしり詰め込んだご飯の上に旨そうに焼かれた鶏のもも肉がまるまる一枚分載っている。
いやはや・・・と思いながら、わたしは彼の向かいで新聞の囲碁欄と将棋欄を読んでいた。
で、なにやら気配を感じて顔を上げると・・・。
もう食い終わっているんですな。
その間5分もあったでしょうか!
す、す、す、すごすぎる!
「は、早いな」
と言うと
「そうですか」
と言っている。
本人に自覚はないらしい。

それにしても胸のすくほどの食いっぷりです。
そんなこと忘れてましたけど、きっとわたしらも高校時代はこうだったんでしょうな。
ひたすら食べてた。
そして、食べても食べてもはらがへった。
しかしまあ、男子高校生がいる家のエンゲル係数は上がりますな。

とはいえ、これぐらいたんと食べてくれると、飯を作るかあちゃんも、ほとんど生理的な、ともいうべき快感をおぼえるんじゃあないかしら。
わたし、この子にご飯を食べさせるために生まれてきたんだわ! っていうような。

しかし、肉と飯、これだけあれば男子高校生に味付けなんて要りませんな。
むだです。
量、がすべてです。

ところで串田君の部活には、野球のボールよりも大きな握り飯を毎日欠かさず7個持ってくる奴がおるそうです。
な、な、7個ですぜ。
日本の農業はまさにこのような男子高校生の圧倒的食欲によってのみ支えられておるんですな。

ところで、食べ終わった後、彼のタッパーの外側を物指しで計ったところ
縦 15センチ、横 22センチ 深さ6センチでした。

やはり、デカイ。

 

 


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