漱石忌
野良猫に軒借られゐて漱石忌
尾池和子
今日は漱石の命日だそうである。
というわけで、毎日新聞の《季語刻々》には漱石の
累々と徳孤ならずの蜜柑かな
という句が載っていた。
一方朝日では、「三四郎」が、今日は縁側で絵を描いている野々宮君の妹さんとおしゃべりをしていた。
天下太平である。
このごろはNHKのニュースを見ない。
見ると胸が悪くなる。
狼騎宗匠は俳句としばらく手を切られるそうだが、こんなとき、俳句でもなければまったく生きているのもうんざりしてしまう。
智に働けば角が立つ。
情に棹させば流される。
意地を通せば窮屈だ。
兎角に人の世は住みにくい。
住みにくさが高じると、安いところに引き越したくなる。
どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生まれて、画が出来る。
「草枕」の冒頭にそう書いてある。
まったくそのとおりだと思う。
詩や俳句や絵画がなければ、まったくこの世は生きづらい。
池を出ることを寒鮒思ひけり
永田耕衣
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