凱風舎
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台風一過

 

風の吹きくる方より風の走ってゆく方を眺めれば木立や草原がずっと鮮やかに見える。

 

 

― 「レオナルド・ダヴィンチの手記」(杉浦明平 訳)―

 

 

 

朝、雨戸を開けると、外はまるで「台風一過」という言葉の標本みたいな真っ青な空が広がっていた。

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外に出ると台風の名残りの風がときおり強く吹いてくる。
空は、澄んで、澄んで、少し高いところに登ると富士山がくっきりと見える。
(俊ちゃんのカメラだときれいに撮れそうだ)
こんな風の日、海にいれば、北斎の「神奈川沖波裏」みたいなのかもしれない。

画家と言えば、レオナルド・ダ・ヴィンチが風のことをその手記に書いている。
風を正面に見るより、その通り過ぎた背後から見る方が風景が鮮やかだというのだ。
わたしの目にはその区別はつかないが画家はそう言う。。
彼によれば、風が吹いて行く方を見ると、木々の葉裏がはっきり見えて、だからずっと鮮やかにみえるのだという。

言われてみれば、そうかもしれない、と思う。
そして、それは風に限ったことではなく、私たちは、いつだって、こちらに向かってくるものよりも、通り過ぎたものたちしか、そのほんとうの姿を認識することはできないのだ、とも思う。
台風も、火山の噴火も、震災も、津波も、原発事故も、それがやって来てからでなければ、ほんとうはそれがどんなものであるかがわからないのだ。
もちろん、戦争も同じだろう。

夕刊によれば、今日閣議で「特定秘密保護法」の運用基準が閣議決定されたらしい。
台風情報は一日中流し続けるし、津波警報だってすぐに伝えるNHKなのだが、これには
「50年に一度の土砂災害のおそれ」
はないのだろうか。

 


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