コンセント
まるい空がきれいに澄んでいる
鳥が散弾のようにぼくのほうへ落下し
いく粒かの不安にかわる
― 吉本隆明 「その秋のために」―
夏休みの終り頃からパソコンの調子が悪かった。
正確にはパソコンではなく、プリンターの方の調子が悪かったのだ。
イヤ、どっちも別個には動くのだ。
ところが二つがつながらない。
せっかく子ども向けのプリントを作って【印刷】のボタンを押してもうんともすんとも言わないのだ。
「なんじゃろか?」
と、私が考えてもしようがないので、夏休みの間手書きのプリントを作っていた。
そうは言っても、手書きはメンドーである。
というわけで、先日、俊ちゃんに電話してみた。
「じいさん、前もそんなことあったねえ」
話を聞いた俊ちゃん、電話の向こうで笑っている。
言われた方はとんと記憶がない。
「そのときはコンセントを抜いたら直ったと思うんだけど」
「コンセントって、プリンターの?」
「そう。それを一回抜いて、もう一度差したら直ったと思うんだけど」
私、思わず口走ってしまう。
「えー、そんな簡単にぃ!」
「そんな簡単に。」
俊ちゃん、笑っている。
記憶にはないが、そこまで言われるならやってみるしかない。
と、
うぃーん!
あーら、不思議!
プリンタが音を立てる。
直った!!
なんなんですかねぇ。
プリンターの中で何が起こっているのかむろん私にわかろうはずもないが、要は一度「コンセント」を抜くと、こういうものは直るらしい。
(たぶん、正確には「直ることもあるらしい」なのだろうが)
はてさて、夏休みが明けたあとの私もなにやら「不具合」。
ままよ、と、そのまま十日ばかり「コンセント」を抜いておくことにした。
「通信」のこと、気にしないことにした。
なかなか気楽であった。
で、昨日、それをやおら差し込んでみた。
さすがに「うぃーん」と音を立てるほどではないし、もともとさしたる性能も持たぬ「写字器械」ながら、まあ、先に変わらぬくらいの駄文は書けるようになっていたらしい。
それに何より見知らぬ《そう…かな》さんにお返事も書かねばならない。
なんだか長くなりそうな気もするが・・・。
そういえば、私より長く「コンセント」を抜いていた大石君も再びプラグを差しこんだようだし・・・。
今日、雨あがりの青い空。
窓から私の方にはけっして落ちては来ない鳥たちの声が聞こえている。
今から、畳に寝ころんで、図書館から借りてきた茨木のり子の詩集を読み返そうと思う。
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