墓のうらに廻る
蝉の殻じっと見つめて憲法もかくのごとくになりにけるかな
津田洋行
―2014年9月1日「朝日歌壇」―
夏休みも終わりの千鳥ケ淵の戦没者墓苑。
誰もいない。
片隅の池にすでに敗荷。
やれはちす。
曇り日。
力ないアブラゼミの声。
ツクツクホウシの声。
すぐそばの首都高を通る車の音ばかりが高い。
木にとまっていたツクツクホウシ。
声だけではなくこの目でこのセミを見たのは
蝉取りに凝っていた小学校の1・2年以来のような気がする。
ツクツクホウシの抜け殻。
こんなに小さい。
私の小指の先よりも小さい。
墓苑右手に建つ今上天皇の御製の碑の下に置かれた銅板。
戦なき世をあゆみきて思ひいづ かの難き日を生きし人びと
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