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今日も「与ふるかぎり」かよ!

 

あたふ【能ふ】 (自ハ四)   ①できる。可能である。③適する。ふさわしい。

あたふ【与ふ】 (他ハ下ニ)  ①物を人に与える ②こうむらせる。受けさせる。

 

― 『旺文社 古語辞典』(松村明 他 編)―

 

 

さっきテレビで見ていた今日の戦没者慰霊式典の式辞の中で、懐中から原稿を取りだした安倍晋三首相はまた

「《あたうるかぎり》貢献し」

とおっしゃっておられた。
もちろん近隣アジア諸国への言及もなかった。

いやはや、聞く耳持たぬ人というものは!

 

もう一度書いておけば、「できる」という意味の【能ふ】は四段活用なので
  は・ひ・ふ・ふ・へ・へ
と活用する。
したがって「かぎり」という名詞に続く連体形も「あたふ」である。
このまえ書いたように、もし、どうしてもこの言葉を使いたいのなら「あたかぎり」が正しい。
それを「あたふるかぎり」と言えば、それは下二段活用で
  へ・へ・ふ・ふる・ふれ・へよ
と活用する【与ふ】という事になる。
したがって彼の言う「あたふるかぎり」は「与える限り」という意味にしかならない。

ついでに書いておけば【能ふ】という語は、つかわれる時「能はず」のように下に打ち消し語を伴って使われるのが普通であり、それが「正しい日本語」の常識であろう。

 


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