帰郷
遇無公事客休時 遇(たまたま)公事無く 客休(や)む時
席上談兵較両碁 席上兵を談じて 両碁を較(きそ)う
心似蛛絲遊碧落 心は蛛絲(しゅし)に似て碧落(へきらく)に遊び
身如蜩甲化枯枝 身は蜩甲(ちょうこう)の如く枯枝と化す
湘東一目誠甘死 湘東の一目は誠に死に甘んずるも
天下中分尚可持 天下を中分して尚お持す可し
誰謂吾徒猶愛日 誰か謂う吾が徒 猶(な)お日を愛(おし)むと
参横月落不曾知 参(しん)横たわり月落つるを曾(かつ)て知らず
さしたる用事もなくほかに来客もないゆえ
椅子にすわっておまえさんと黒白の石をたたかわす
心はクモの糸みたいに世間を離れて青空にただよい
体はセミの抜け殻みたいに身動きもせず考え込む
右辺の一団は目が一つしかないから死んでしまったようだが
まだまだ盤上は二分されていてこの形勢ならまだまだ持ちこたえられそうだ
わしら碁好きが時間をおしむ、なんて、誰が言うんだい
オリオンが西に傾き月が落ちたことさえ知らないわしらなのに
― 黄庭堅 「弈棋(えきき)― 任公漸(じんこうぜん)に呈す 其の二」―
毎春のことながら、今年も明日4月1日帰郷します。
4日にこちらに戻ってくる予定です。
引用は北宋の詩人黄庭堅の「弈棋」(=囲碁)という詩。
こないだ読んで、なんだか私と誰かさんのことみたいだなあ、と思って笑いました。
もしおひまならお寄りください。
盤を拭いて待っております。
ところでセミの抜け殻といえば・・・
昨日の風雨止んで今日碧落
去年の蜩甲いまだ壁上に在り
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