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世襲

 

 かれはもはや「お前の父親はだれか」とはきかれなかった。
 「お前はなにができるか」。

 

 ― 長谷川輝夫・大久保桂子・土肥恒之 「ヨーロッパ近世の開花」 ―

 

 上の文章はピョートル大帝の頃のロシアの話である。
 世界史における近世、近代というものはこのようにして始まっていったのだ。

 ひるがえって、今の東アジアを見ると、ロケットを飛ばしたと言ってイバッテいる北朝鮮の金正恩は言うに及ばず、中国の習近平は親が共産党幹部だった「太子党」だというし、韓国も朴正煕元大統領の娘が与党の大統領候補になっている。
 そして日本もまた、そのような、血筋以外何の取り柄もなさそうな人が今度また総理大臣になりそうだと報道されている。
 なんとまあ、東亜に脈々たる世襲文化であろう!
 そこでは
  「おまえは何ができるか」
ではなく、むしろ
 「おまえの親はだれか」
ということが問題になるらしい。
 歌舞伎役者じゃあるまいに。
 それとも、これは新しい「中世」の始まりなのであろうか。
 東アジアのいずれの国の社会にも格差がじわじわと広がり、階層の固定化が始まっている。

 


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