手をつなぐ
手ぶくろ
手ぶくろをかりた
ママとかた方ずつつけて
はんたいの手はつないだ
手ぶくろをつけた方より
つないだ方があたたかかった
風がふいているけど
二人の回りはぽかぽか春の日より
大村文 (小3)
― 長田弘 選 「202人の子どもたち」 ―
今年一番の寒さとか。
文ちゃんは手ぶくろをした方の手より、ママとつないだ手の方があたたかかったって言う。
きっと、そうだったんだろうな。
よくわかる。
こんなおじさんだって、遠い昔そんなことがあった気がしてくる。
そのあたたかさは温度計なんかでは計れないあたたかさだな。
ママの顔を見て笑ってる文ちゃんの顔まで見えてくる。
手をつなぐということはもちろん一方的な関係ではなく相互的な関係だ。
こちらの握る力が相手に伝わり相手の握る力が自分に伝わる。
だから、言葉にしなくたって相手の気持ちがわかる。
だからあったかい。
けれど、それだってどちらかが手をさしのべなければ手はつなげない。
文ちゃんとママはどちらが先に手を伸ばしたんだろう。
きっと、両方一緒、だったんだろうな。
それが一番いい手のつなぎ方。
子どもはママとだけじゃなく、いつだって誰とだってすぐに手をつなぐことができる。
なかよしとはもちろん、そうじゃなくてもさみしそうにしてる子にだって、となりからすっと手をさしのべることができる。
上級生は下級生にちゃんと手を出してあげる。
子どもは言葉なんて余計なものがうまく使えないだけ、かえって体が心に素直に反応するんだろう。
言葉だけがコミュニケーションの手段だなんて思ってる大人は何か大事なものを失くしてしまったんだね。
手をさし出すことは、一見相手が手を自分にゆだねることを求めているように見えるけれど、ほんとは、それより先に、まず相手に無条件に、私はあなたに自分をゆだねます、って言ってることだ。
それは、君がいい人だってこと知ってるよ、って言ってることだ。
だから、そうされるとうれしい。
そして、もしそれが両方同時にそうするんだったらもっとうれしい。
手がぽかぽかする。
そんな人と手をつなげるなら寒い日もわるくない。
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