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十三夜

 

  ふる郷は波に打たるゝ月夜かな

 

  ― 吉田一穂 「魚歌」 ―

 

 明日は兄の忌なれど体調悪く帰郷せず。
 さみしき兄を思うて心ぐるし。

 今宵、十三夜。
 大いなる月を目にして、わが家は海から遠けれど、ふと、吉田一穂の詩に付けられてある俳句など思い出でられて。

    ふる郷は廃家も白き月夜かな

 

 

   咳一つ故郷に帰らざるといふ

   名乗り出でし鵯(ひよどり)ほがらほがらかに

   コンクリに日当たる壁や秋の蜂

   柚子の実や兄よりいくつ年重ね

   兄呼ぶはいつも幼な名 蜜柑の黄

   夕焼けてたとへばキャラメル分けくれし

   鼻水や大いなる月出でてゐし

   十三夜兄の忌の花買ひ帰る

   月の墓白く洗はれてゐたりけむ

   父母と兄一処に眠る月夜かな

  

 

 


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