凱風舎
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秋に

 

 

 「朝起きてみると、きっとお日さまがかゞやいて、小鳥がさえずっていますよ」

 

  ― ヴァージニア・ウルフ 『燈台へ』 (中村佐喜子 訳)―

 

 

 昼、外に出すように鳴いてねだったヤギコは、雨が降っていることに気づいて、ものの一分もたたないうちに、今度は中に入れてくれと鳴く。
 それでも20分もすると懲りずにまたドアのところで鳴きはじめる。
 そして、鳴けばドアを開けてもらえるものだと思って、すましてそこに正座している。
 ヨワッタ奴だ。
 まるで晴れさえしたら燈台に行けると思っている子供みたいだ。
 彼女にとってほんの少し前雨が降っていたことはもう頭に残ってはいないらしい。
  だって、もう晴れてるかもしれないじゃん。
 そうかもしれないが、でも外は薄暗いままだし、ほら、雨の音も聞こえるだろ。
  ニャニャニャーン!
 聞き分けのない奴。
 しかたがないから、ドアを開けてやる。
 でも、やっぱり、すぐに戻ってくる。
  ニャーア!
 中に入ってきて顔を上げて非難されたって、雨を降らしているのは私ではないのだよ。
 太平洋上を東に進んできた低気圧のせいなのだ。
 お昼のテレビで天気予報のおじさんがそう言っていた。

 それにしても、ヤギコ、秋になったね。
 ほんの三日前まであんなに暑かったのに、今日は私もとうとう長袖のシャツだ。
 おまえも今日は毛布を敷いたあの椅子の上で静かに眠りなさい。
 明日は晴れるそうだよ。


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