経年劣化
あかあかと日は難面(つれなく)も秋の風
芭蕉
こないだまで夜にさえ蝉が鳴いていたのに、夜はいつしかその声も絶え、代わりに草むらに鳴く虫の声が一夜一夜大きくなっていくのは、暑いとはいえやっぱりもう秋だからなんでしょう。
…などと気取っていますが、やっぱり昼は暑い。
というわけで、勉強に飽きた中学三年生の子どもたちと休憩時間にアイスをかじっていたら、なんと今年も入れ歯が欠けてしまいました。
しかも2本。
去年の夏もたしか何かをかじっていて(トンソクでした!)そうなった記憶があるのですが、今回の犯人は井村屋の「あずきバー」でした。
たしかに、この「あずきバー」というのはほかのアイスに比べて相当に堅い感じがあるんですが、だからといって、あなた、前歯がアイスに負けてどうする!
はじめにかじりついたとき、ゴキっと音がして、一本が欠けたので、
「見てみろ、歯が取れたぞ!」
などとと子どもらにイーをして見せて、笑わせておったのですが、そうはいってもまだ手にはほとんど無疵の「あずきバー」。
まあ食べないわけにもいかないので、再びかじりついたら、あろうことか今度はおとなりの前歯まであえなく頓死してしまいました。
うーん、どういうこと?
鏡で見たら、そこにはまるで歯替り期を迎えた小学生みたいな老人の顔がありました。
小学生ならそれもかわいいのですが、60歳の老人のそれはむろん、不気味、です。
午後に英語の宿題をやりにやって来た愛紗君にも大笑いされてしまいました。
吹く風を秋風と呼ぶのはまだまだお世辞の匂いがする今日この頃ですが、私の口もとだけは
ものいえば唇さむし秋の風
の風情でございました。
それでも、夕刻歯医者に行って治して(直して?)もらいましたが、
「テラニシさん、この入れ歯も10年以上になりますからねえ。
今回は応急処置ということで、新しいのに作りかえましょう」
とのご提案。
まあ、夏の恒例の如く前歯が欠けていた日にゃあ、こっちもたまったもんではありませんから、こっちから頼もうと思っていました。
それにしても、
入れ歯すら経年劣化す、いわんや生身の身体をや
でございますな。
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