凱風舎
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誤訳!

 

「カルボナード火山島が、今爆発したら、この気候を変へる位の炭酸瓦斯(ガス)を噴くでせうか。」
「それは僕も計算した。あれがいま爆発すれば、瓦斯はすぐ大循環の上層の風にまじって地球ぜんたいを包むだらう。そして下層の空気や地表からの熱の放射を防ぎ、地球全体を平均で五度位温(あたたか)にするだらうと思ふ。」

 

 ― 宮澤賢治 「グスコーブドリの伝記」 ―

 

 昨日から一転、今日は涼しくなった。
 部屋にいても長袖でなければ昼間でも肌寒いほどだった。
 ところが、新聞によれば今年のロンドンはそれどころではないそうだ。
 最低気温が12℃と書いてある。
 襟巻きしている人もいるという。
 それは夏と言わないだろう。
 賢治なら、おろおろ歩いていおる!!
 と、思って、調べてみたら、なんとロンドンの7月の平均気温は、ふだんだって17.1℃と書いてある!
 (ちなみに8月は16,8℃)
 こんなもん、夏か!!
 ロンドンに「夏」なんかないじゃないか!!

 思えば、そもそも《summer》の訳を「夏」としたのは誤まりだったのだ。
 (もっとも、じゃあ、どう訳せばいいのか、と言われてもわからないが・・・)
 要は《summer》 と「夏」は、もともとまるで違うものだったのだ。
 私らはダマサレていたのだ。

 だいたい、平均気温が20℃を超えないんじゃあ、それは7月だろうが8月だろうが私だって背広を着るわさ。
 ネクタイだって締めてみせるわさ。
 近頃は、やれ、クール・ビズだの、スーパー・クール・ビズだの言っているが、そもそも今までの日本がおかしかったんだ。
 何がかなしくてこの高温多湿の国の「夏」に男たちはネクタイなんぞ締めてたんだろう。

 ところで、オリンピックが来るのにこの寒さなので、ロンドン市長は、冗談めかして
「動物愛護団体に怒られない程度に、ヤギかウサギを生贄に捧げて祈るべきか」
と地元紙に投稿したそうだ。
 大いに笑ったけれど、野蛮だね。
 そんなことよりもっと「科学的に」、CO2排出取引なんぞというバカな金儲けを考えてる輩を懲らしめる方が一等手っ取り早いんじゃなかろうか。
 グスコーブドリもペンネンネンネンネン・ネネムもきっとそう言うと思う。
 だいたい《summer]》しか知らない国の人が「地球温暖化」なんて心配してどうする!

 ところで、いわゆる「賢治ファン」というのは、どうも「エコ大好き!」みたいな人が多いように思えるが、「グスコーブドリ」を読む限り、彼はCO2などの温室効果ガスこそが、人類を救うと思っているようなんだけどなあ。
 そういうところは読まないのかなあ。


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