ふふふふ
はるの夜やいやですだめですいけません
井伏鱒二
― 坪内稔典 「季語刻々」 (毎日新聞2012・3・27) ―
今朝、机に新聞を広げていたら、飲んでいたコーヒーを思わず吹き出しそうになりました。
この俳句のせいです。
私、たいがいの井伏鱒二の本は読んだつもりでいましたが、こんな俳句知りませんでした。
というか、私が記憶している井伏氏の作った俳句と言えば、『多甚古村』のはじめに出てくる
池にはさざら波梅の村に入る
だけでした。
もっとも、これも小説では誰かが作ったやつだというような話でしたし、あと、
月に小便かなわぬ恋の夜寒かな
というのもありましたが、これは大学生の井伏氏が岩野泡鳴を初めて訪ねたとき、泡鳴が
「どうだ、いい俳句だろう」
と自作をイバッテ見せたものだったというような話だったような気がします。
それにしても、なんたる俳句でありますか、これは!
なにが 「いやですだめですいけません」ですか!
まったく、たーだ作ってますね、井伏氏は。
と、いうわけで、読み終わってからも、しばらく私の顔には「ふふふふふ」がくっついていました。
なにやら、春風駘蕩たる気分になって来ます。
朝刊にこんなとんでもない俳句が載っていた功徳でしょうか、今日は一日あたたかなよい日でした。
「いやです、だめです、いけません」と言っていた桜のつぼみも、すこしふくらんだようです。
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