五風十雨
美しい五月!
まだ少女のような先生が
光の窓から笑いかける
― 高田敏子 「買い物」―
朝のFMラジオから朗らかなハイドンがながれている。
窓から見える青空を時折薄いレースのような白い雲が横切っては消えてゆく。
昨夜のあんな嵐をどこでやり過ごしたのか、黒の揚羽蝶が柚子の花に戯れている。
自分が朗らかであること。
快活であること。
しあわせの秘訣なんて簡単なことだ。
ハイドンも揚羽蝶も同じことをいう。
五風十雨。
五日ごとに風が吹き、十日ごとに雨が降る。
それが、天下太平のしるしだと、昔の人は言った。
嵐の去った朝。
美しい五月!
この窓からは年とった先生が空を見ているだけだが、やっぱり五月は美しい。