風薫る
汝自身が時を作る。汝の五感が時計である。
汝が不安を押さえたなら、時はそこから始まる。
― 中村真一郎 「古語余韻」(シレジウス)―
夜、窓を閉じようと窓辺に立つといい匂いがした。
そうだった !
今朝起きて窓を開けた時も、風にいい匂いがしたのだった。
いつのまにか花つけていた、部屋の傍らの柚子の木。
忘れていたけれど、今日一日、私がいい気持ちで過ごせたのは、きっと朝の窓辺にかいだこの匂いのおかげだったのだ。
東の空に、黒猫の目のようなアーモンド形の金色の月。