凱風舎
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卒業式

 

 

卒業の涙はすぐに乾きけり       今橋眞理子

 

 

今日、市内の中学校は卒業式でした。
泣き虫のジュリちゃんはもちろん、アヤノちゃんも、ほのかちゃんも、なっちゃんも、もうひとりのなっちゃんも、塾の女子たち、みんな泣いたんだろうなと思います。
まあ。男子は泣かなかったでしょうが。

でもまあ、今橋氏の句にある通り、そんな卒業式の涙はすぐに乾きますな。
むろん、涙なんて、いつだってすぐに乾くものだけれど、こんなにきっぱり、切れ字まで入れて
「すぐに乾きけり」
なんて断言できる涙は、そうそうない。
さっきまで泣いていた彼女たちの目も、もう、笑っている。
もう前を見ている。
明日の方に向いている。

それは、窓辺のプランターのパンジーにしろチューリップにしろ、みんな、気がつけば、水をくれた者がいる部屋の方ではなく、明るい光が差す外に向かって花を開くのと同じです。
彼らに、光は、いつだって未来から射してくるもののはずです。

どんなに泣いたって、卒業式のことなんてすぐに忘れるし、中学校のことだってすぐに忘れる。
泣いて、別れて、泣いて、そして、忘れて。
それが人生なら、そんな人生のはじまりが中学校の卒業式なのかもしれない。

ところで、よくかんがえてみたけど、私、自分の卒業式のこと、これっぽちも覚えていない事に気づいてしまった。
要は、どの卒業も、私には、なんでもない日だったってことなんだろうが、ほんとに何も覚えていない。
それは私が男だからなんだろうか。

諸兄諸姉におかれてや、いかん。

 

口に出てわれから遠し卒業歌           石川桂郎