「初舞台は『橋弁慶』」 邑井さん
弁慶の 秋吟詠や 五条橋
狼騎先生の初舞台を観に能楽堂に行ってきました。
紋付、袴姿も凛々しく、こめかみに青筋を立てて謡う晴れ姿は実にあっぱれ、感服致しました。
地謡の斉唱も迫力がありましたが、リハーサルは一切なく、当日初対面の方もいたとか。
道理で節回しのずれる方がいましたが、その程度のことは許容する日本文化特有の懐の深さを感じました。
不思議なことに、狼騎先生を注視していると狼騎先生の声が聞き分けられ、他の人に注意を向けるとその方の声を選択的に聞くことが出来ました。
これまであまたの合唱を生で聞きましたが、このような体験をしたことがありません。
能には舞台と客席を巻き込んだ独特の空間があることを体感致しました。
狼騎先生にそのような感想を伝えると、来夏の観能の夕べはぜひ御一緒しましょうと誘われました。俳句、太極拳、能と多才な狼騎先生ですが、私はそのすべての内弟子を任ずることになりそうです。
邑井雅和
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おたよりありがとうございます。
安田登氏の『日本人の身体』(ちくま新書)によれば、フランスの劇作家ポール・クローデル氏は能舞台を
「客席という海に迫り出てくる舞台」
と評したそうであります。
そして、能の物語は、舞台の上ではなく
「すべて観客の内部で進行する」
と書いたそうであります。
邑井氏の感想を読んでいて、クローデル氏の言葉の正しさを思い出した次第です。
私も観たかった!
すてぱん