凱風舎
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蜻蛉

 

 

とどまればあたりにふゆる蜻蛉かな

 

                中村汀女

 

 

 

台風が駆け抜けたあと晴れあがった草はらに出てみると蜻蛉がたくさん浮かんでいた。
夏の終りにはまだ枯れ葉色だった胴体も、もうみんなすっかり赤くなった。

 

蜻蛉がためいきのように流れている

 

と歌ったのは誰だったか。

思い出せない。
ひょっとして、私が勝手にそんな詩があったと思いこんでいるだけなのか。

それにしても、赤トンボは群れていても、なぜこんなにさみしく、こんなに静かなんだろう。