凱風舎
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誕生日

 

(覆された宝石)のような朝
何人か戸口にて誰かとささやく
それは神の生誕の日

 

― 西脇順三郎 「天気」―

 

蒸し暑い夜が明けた朝、草はらを歩くと足先が濡れる。
見れば、草たちがみなその葉先に水滴をつけているのだ。
あの水玉は、空気中の水蒸気が露となっておりた朝露ではない。
あれは、植物たちが、葉のふちにある水孔(すいこう)から自らしみだせた水だ。
昇ってきた朝日にそれらはまるで宝石のように輝くが、手に取ろうとすれば、それらはすぐに落ちてしまう。
はかない。
が、それはうつくしい。

今日は勝田氏と菊池氏の誕生日だ。

62年前のこの日、金沢の門田の稲は、その葉先にみなきれいな宝石を輝かせいていたことだろう。
61年前の北海道の牧場もまた一面キラキラと朝日に輝いていたろう。

「(覆された宝石)のような朝」に生まれた二人。
お誕生日おめでとう。

60を過ぎれば、たぶん、私たちもまた自分の中からしみ出たものでしか身を飾れないのだ。
それを輝かせる光がたとえ昇らぬにしても、きよらかで澄んだ水滴をたえずにじみださせる、そんな人でありたいものです。