凱風舎
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「特需」 北川司さん

 

昨日息子(23歳)から「北朝鮮はなんで韓国を攻撃するんや」と聞かれた。
今までにないまっとうな問いに私は一つひとつ
「これはわかるか?」
と確認しながら話しをした。

まず、昭和25年に朝鮮戦争というのがあって、南北二つに分かれてしもうたんや。
これはいうたらソ連とアメリカのけんかのとばっちりや。
そこから共産主義とか資本主義とか説明するのは私の能力を越えていたので、前にM鉄工所で働いていた時の親父さんに聞いた話をした。
親父さんは朝鮮戦争の特需の恩恵に預かったという。
その当時缶詰を戦地に送らにゃいかんということで、その仕事に回されたのだが鯨だか牛だか忘れたがとにかく肉が足らないもんでカンナくずを詰めていたという。

 

なっ!戦争ちうのは昨日までのAさんがAさんでなくなってしまうんや。
だけどもそういう特需で当時の日本は景気が良くなったんや。
そのおかげで今の生活もあるんやけど、特別自分たちだけ儲かるなんてインチキで胡散臭いもんなんや。
だけどこれからは日本が当時国になろうとしとれんぞ。
集団的というたらアメリカを敵と見なしとる国は日本も敵とみなす、という意味や。
日本が攻撃すれば当然反撃されるということや。

 

日本は島国だから、蒸気船、ペリーが来るまで殆ど何事もなく海に守られてたんだけど、今は海岸線に山ほど原発があるから仮想敵国に原子力潜水艦があったら終わりや。
幕末にすごい金かけて各地に砲台を築いたけどなんの役にも立たなかった。
今の政府が防衛費をこれからいくら増やそうと日本の海岸線を全て防備できる訳がないやろ。

原発を攻撃された日にゃ日本は亡国どころか廃国や。
日本人はこの国に住むとこなくなる。
しかもやで、この先政府は都合の悪いことは説明せんでもいいということになっとってやな、「それは秘密です」という法律まで作ってしもうたんや。

 

とまあ、最後はありがたく酔いも回ってきて、はてさてどこまでご理解いただけたことやら。

 

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おたよりありがとうございました。

わたしもどれほど多くの問いを父親にして来たことでしょう。
自分を取り巻く世界のさまざまな疑問を皆父親に聞いたものです。
そして父親はそれらの問いにどんなにか丁寧に答えてくれたことでしょう、酒を酌みながら。

よき問いだけがよき答えを引き出すことができます。
そして、子が父に問う問いはつねによき問いです。
なんとなれば、よき問いとは、尋ねられた側がもう一度自分の中でその問題を問い直すことを促すような問いを指すはずだからです。

ひょっとすれば、子からの問いほど父親にとってうれしいものはないのかもしれません。

それにしても、いつごろから私は世界に関して父親に問うことをやめてしまったのでしょう。
自分の中に、父親とはちがう価値観世界観を持ちはじめたと時期ということなのでしょうが、それがいつのことだったのか、あまりよくはおぼえていない。
気がつけば、もう父とはあまり口を利かなくなっていた。
たぶんは、どこの息子もみなそのようなものなのでしょう。

となれば、司氏への息子さんの問いこそがひょっとしたらうれしい「特需」だったかもしれませんね。

 

.                                                                                  すてぱん