凱風舎
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 急に舵を切った船は荷崩れを起こし、沈み、ずいぶんの人が犠牲になる。
 そういうものであるらしい。
 一か月前、そんなことが起きた。
 隣の国のことである。

 それから一ヶ月、この国では、そうやって語ることがカッコイイと思っていらっしゃるらしい人が、例によって拳を握りしめて、国の舵を大きく切るのだと言っている。
 彼は、なぜ舵を切るべきかは語るが、舵を切ることによって、船内に居る人びとがどのようなことになるかは語らない。
 隣の国の船長は、いの一番に傾いた船から脱出した。
 残された乗客は死んだ。
 あの船長は、客船の船長というものがまず第一に何を考えねばならないのかをわかっていなかった。

 国家の舵をあずかる者は何を第一に考えねばならないのか、あの方がそれがわかっている人とも思えないが、そんな人が舵を握って離さない。