福田君
福田祥平君が遊びに来た。
大学を卒えて、この四月から就職するので挨拶に来たのだと言う。
二十歳を過ぎてひさしぶりにやってくる子どもたちは、みな一人前の大人の姿で私の前に現れる。
何がそれをもたらすのか、私は知らない。
けれどもそれは毎回わたしをうれしい驚きで満たす。
単なる時間の経過ではない何かがあって、それが彼らの中で「今ある自分」を変えさせていくらしい。
それはほんとうに目に見えないほどのゆるやかな変わり方なのかもしれないが、長い間会わずにいた者にはとても大きな変化として立ち現われてくる。
だから私は驚く。
すごいなあ、と思う。
人は変わる。
年寄りの変身は、体の具合をふくめて、なにやらマイナス要素が多いようだが、子どもたちはみなよい方に変わる。
それはなんとまあ、素晴らしいことだろう。
親しさの中にも礼儀正しい応対を続けていた福田君が帰ったあとも、私はやはり愉快な気持ちでいた。