向かい風
金毘羅(こんぴら)ふねふね
追風(おいて)に帆かけて
しゅらしゅしゅしゅ
― 「金比羅船々」―
そのとき吹いていたのは追い風だったのだそうだ。
それで、遠くへ飛べなかったのだそうだ。
オリンピックでメダルを取れなかった高梨沙羅選手がジャンプしたときのことだという。
追い風と言えばわたしたちはよいものだと思い込んでいる。
背中を押してくれる。
帆をはらませてくれる。
「金毘羅船船」なんて、今は誰も歌わないのかもしれないが、誰だって皆、追い風が吹けば
シュラシュシュシュ
と進むものだと思っている。
けれども、それでは遠くへ飛べないのだそうだ。
飛び立つ者は向かい風を受けてこそ、遠くへ飛べるのだという。
今日、千葉は公立高校の入学試験。
舞台こそちがえ、子どもたちもまた今日はそれぞれのジャンプ台の上に立っている。
多くの子供らにとって、これは、自分一人の力で受け止めなければならない外の世界から受けるはじめての向かい風だ。
けれども、きっとそれが彼らをより遠くにジャンプさせてくれるのだ。
そうは言っても、今日吹く風が一人一人の子どもたちにとって自分を失速させるようなあまりに強過ぎる向かい風ではありませんように!
みんな、「踏切り」、ちゃんとできたかなぁ。