情に棹させば
山道を登りながら、かう考へた。
智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい。
― 夏目漱石 「草枕」 ―
文化庁の国語世論調査によれば、慣用句の中で誤って使われているものが多々あるとして、以下のようなことが、と今朝の新聞に載っていた。
「噴飯もの」
× 腹立たしく思うこと 49.0%
◎ おかしくてたまらないこと 19.7%
うーん、みなさんは腹が立つと思わず口から食べてた飯を噴き出すらしい。
「流れに棹(さお)さす」
× 傾向に逆らって、ある事柄の勢いを失わさせるような行為をする 59.6%
◎ 傾向に乗って、ある事柄の勢いを増すような行為をする 23,4%
どうなんですかねえ?
まあ、みなさんはもはや、漱石の「草枕」の冒頭の名文なんぞ知らないんですな。
ましてやアベノミクスの流れに棹さしておるようなお方においてをや、でございます。
古典を知らなければ、慣用句なんぞ死滅するに決まっています。
・・・などと言っているようだから、私、この世が住みにくいのかもしれませんが。