眼中林檎
力を尽くして狭き門より入れ
― 「福音書・ルカ伝13章・24節」 ―
シネコンでチケットを買うとき、
「どちらの映画でしょう?」
と窓口のきれいなおねえちゃん聞かれて、ついつい年甲斐もなく自意識過剰になってしまう題名てのがありますな。
たとえば、これなんかどうでしょう。
「あの頃、君を追いかけた」
うーん、言えませんな。
なかなか言えない。
60の爺さんですからな。
若くても、
「あの頃、君を追いかけた」
私、言えません。
というわけで、もごもごと口の中で優柔不断に
「あのー」
などと言ってると
「あ、『あの頃君を追いかけた』ですね」
と、おねえちゃんはこちらの逡巡など知らぬ気ににっこり笑ってチケットをくださるわけです。
というわけで、私、今日はその「あの頃、君を追いかけた」を無事見ることができました。
めでたし。
台湾の映画です。
なかなかおもしろかったですし、それにいい映画でした。
要は人生を肯定している映画なんですな。
映画館を出たときなにやらしあわせな気分になっている。
ついでに言っておけば、いつの時代でもどこの国でも 、男子高校生ちうもんはアホなもんですな。
世界一アホな人種です。
それにしても、台湾映画ですよ。
昔でいえば
「戀戀風塵」
あるいは
「悲情城市」
なんて名作がありましたが、いいですな、題名も。
これなら安心して窓口で映画名を言えます。
それをなんですか、「あの頃、君を追いかけた」なんてのは。
これ、なんとかならんかったんですか。
ちなみに英語の題名は
Apple in my eyes
とか書かれていたように思えたんですが、だからと言って「眼中林檎」ってわけにもいきませんわな。
ついでに書いておけば、金沢シネモンドで今週末から上映らしいです。
おひまなら是非。