凱風舎
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ツクツクホウシ

 

知事は、彼自身の言葉を借りれば、みずからの責任において、直ちに明日から所定の措置をさらに強化することにした。


― カミュ 「ペスト」 (宮崎嶺雄 訳)―

 

 

朝からツクツクホウシが鳴いています。

ツクツクホウシ
ツクツクホウシ

彼はこうやって鳴くだけ鳴いて声慣らしをした後、息せき切ってこんなふうに歌いおさめます。


ツクヅクホウシャノ―イヤー
つくづく放射能 嫌ッ!
ツクヅクツクヅク・・・・。

去年も同じ声で鳴いていました。
おととしも同じ声で鳴いていました。 
なのに事態はすこしもよくならない。
それどころか悪化しています。

今朝の新聞によれば安倍首相は昨日の自民党の全国幹事長会議で、福島第一原発の汚染水問題で
「国がしっかり責任を持つ」
と先頭に立つ決意を強調したのだそうです。
それは今日引用したカミュの「ペスト」の中に出てくる知事の言葉とほとんど同じものです。
この知事は事態が本当にひどくなるまで,市に蔓延する疫病を「本当の名前」で呼ぶことをためらっていました。
物事を「本当の名前」で呼ぶことが事態を正しく把握するということです。

孔子さんは弟子の子路に
《先生が政治の責任者になったらまず何をなさいますか》
と問われて

必ずや名を正さんか

と言っております。
もっとも、その子路には

是れ有るかな、子の迂なるや!
(出ましたね、先生のお得意。なんとまあ迂遠なことを!)

なんて言われてますが。
けれども、孔子さんが言っておられることは正しい。
すくなくとも政治家たるものせめて「責任」という言葉くらいは正しく語ってもらいたい。
安倍氏は「責任」という言葉の重さを本当にわかっておられるのでしょうか。
彼の言う「先頭に立つ」とは具体的にどのようなことを指しているのでしょう。

日々増加する放射能汚染水が危機的状態にある中、彼はオリンピックを東京に呼ぶべく「先頭に立って」ブエノスアイレスに向かうそうです。
彼は本当にこの国が危機にあることを認識しているのでしょうか。
多くの国民と国土が危機にさらされる中、原発事故を忘れ、
「オリンピックを東京で!」
と笑顔で世界の人々の前で演説をしたバカ首相として彼は歴史に名を刻むことになるでしょう。

鳴きやんでいたツクツクホウシが今もまた鳴きはじめました。