凱風舎
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コゼット

 

    

     迷わねど思いにたがう日日なれば純白の帆のほしき午後なる

 

                                       馬場あき子

 

 

 風を待っているわけではない。
 風はあるのだ。
 そして、為すべきことを為してはいる。
 たとえうす汚れた破れ帆であろうとそれを張り、それでも足りなければ手元にある古櫂を漕ぎ続けてはいる。
 そのことに迷いはない。
 そうではあっても、ふと、まっさらな《純白の帆》がほしくなる午後もある。
 馬場あき子はそう歌う。

 はて、《純白の帆》とはなんだろう。

 それは、ひょっとして、ジャン・バルジャンにとってのコゼットのようなものではないのかしら。
 ふと、そんなことを思う。

 馬場あき子がどんな心でこの歌を歌ったのか私はよくは知らないのだが・・・。