凱風舎
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夜の散歩

 

 参星(オリオン)が来た! この麗はしい夜天の祝祭(まつり)。

 

    ― 吉田一穂 「少年」 ―

 

 この冬一番の寒さだという。
 ストーブをつけずにいたら、日が陰ると部屋にいてもドンドン気温が下がっていくのがわかる。

 こんな寒いんだし晴れてるから、さぞやオリオンやシリウスも凄かろうと思って8時頃外に出たが、今日は十日あまりの月がオリオンのすぐ上に皓々と照っていて、ちっとも今日引用した吉田一穂の詩のようではなかった。
 空が明かる過ぎるのだ。
 なにしろ灯の届かないところに来ると、真夏の真昼のような短い自分の影が、くっきりと地面に映るほどなのだもの。
 二等星ばかりのカシオペアのMの字なんて、ほとんどかすんだようにしか見えない。
 冬の月も悪くはないんだが、今日はちょっと残念だった。

 それでもなんだかおもしろくて30分ほどふらふらこの寒空を歩いてたんだが、いやはや驚くのは、家々の角でいきなり点灯する「防犯ライト」だ。
 私、泥棒でもなんでもないんだが、道を歩いてて目の前が急に明るくなるもんでホントにびっくりする。
 それが、一軒や二軒ではないんだからなあ。
 ああいうライトというのは、防犯カメラもいっしょに回るんだろうから、習志野市鷺沼界隈では、電気が点いたとたんびっくりしている上ばかり見上げていた白いダウンのフードをかぶった怪しい男の姿が連続的に記録されてるんだろうなあ。
 いやはや、スゴイ国になったものだ。