世論調査 2
さて、人々はパリサイ人やヘロデ党の者を数人、イエスのところにつかわして、その言葉じりを捉えようとした。
「先生、わたしたちはあなたが真実なかたで、だれをもはばかられないことを知っています。あなたは人に分け隔てをなさらないで、真理に基づいて神の道を教えてくださいます。ところでカイザルに税金を納めてもよいでしょうか、いけないでしょうか。納めるべきでしょうか、納めてはならないでしょうか」。
イエスは彼らの偽善を見抜いて言われた。
「なぜわたしをためそうとするのか。デナリ(金貨)を持ってきて見せなさい」
彼らはそれを持ってきた。
そこでイエスは言われた
「これは、だれの肖像、だれの記号か」。
彼らは「カイザルのです」と答えた。
するとイエスは言われた
「カイザルのものはカイザルに、神のものは神に返しなさい」。
彼らはイエスに驚嘆した。
― 「マルコによる福音書」 (⑫ 13-17)―
妙なことは続くものである。
今度はわが黒デンに、慶応大学のなんちゃら研究室とかいうところから「なんちゃらかんちゃら国民意識調査」とかいうアンケートの電話が昨日かかって来たのである。
なんでも、これは「学術的」研究調査であって、下4けたが同じ全国の局番にかけているものだという。
いやはや、私、よう当たります。
ところで、これはボタンを押すのではなく口頭で答える形式で、電話をかけてきた女性は
「全部で20分ほどかかりますがよろしいでしょうか」
と大学を名乗るだけあって、なにほどか知的な声でおっしゃる。
まあ、ヒマゆえ、おもしろがって応じることにしたが、やってみると、これはなかなか大変なことであった。
要は、私の頭はまったくアンケート向きには出来ていないらしいのである。
ご存知のように、アンケートというのは、その回答をあらかじめ決められている中から選ぶというもので、ある事柄についての質問にあれこれと自分の意見を言う、というものではない。
ところが、私の頭はそのような思考に一向慣れていないである。
私の頭もまた、その所有する電話機同様、デジタル仕様ではなくアナログなのである。
黒デン頭。(白髪ですが)
とはいえ、「嫌煙権」についてなんてのは、1も2もなく
「アホなことです!」
と即答できるが、たとえば
「2009年の政権交代まで続いた自民党政権の外交について、
1 たいへん評価する
2 やや評価する
3 どちらかと言えば評価しない
4 まったく評価しない
どうでしょう? 」
などという質問があって、そんなこと、簡単に
「どうでしょう?」
と言われてもたいへんコマル。
「それって、55年以降ずっと、ということですか」
と尋ねると
「いや、質問には特に年限は書いてないんですが」
と言う。
「そんな、あなた、ボーバクとした質問、どう答えればいいんですか」
「はあ」
「たとえば、2000年以降の対アジア外交、とかつけないと、評価しようがないじゃないですか」
「まあ、そう言われればそうなんですが、とりあえずの印象、ということでお答えくだすって結構です」
「うーん」
なるほど、《学術的》だなあ。
要は
「世論」などというものは、人々の「印象」の集積なのだ
ということを見越して調査なさっている。
エライものだ。
とはいえ、こんな感じで30分近く話していて、私、大変疲れました。
なんでも1000円の図書カードをくれるそうですが、すくなくとも黒電話の所有者は、世論調査の対象にはすべきではありませんな。
アンケート調査はその思考にデジタル回路を持つ人間に!
カイザルのものはカイザルに
デジタルのものはデジタルに
これ、鉄則です。
すくなくともイエスほどの知恵を持たないアナログ思考者に二者択一的質問はたいへんコマル。
まあ、センター入試で、国語の問題の答ですら、示された解答群の中から選んでマークシートで答えることがあたりまえになっている時代なんですからね。
それに馴らされた人はたくさんいるので、そのような調査はそちらの方にまわしていただきたい。
それにしても、与えられた選択肢以外、答えるべき事柄がないと思える人が増えるというのは、けっしていいこととは思えないのですが。