やっぱり!(続・ケルコペ)
よろづにその道を知れる者は、やんごとなきものなり。
(何事でも、その道をよく知っている人というものは尊いものである)
― 吉田兼好 『徒然草』(第五十二段)―
二三日前、夕刊を読んでたら、今年の毎日出版文化賞を受賞した『昆虫食文化事典』という本を執筆なさったという三橋淳という農学博士のインタビュー記事が載っていた。
記事によれば、この『昆虫食文化事典』は、虫を食べることに関するあらゆる一次資料を網羅してある本であるという。
さて、そのインタビューの最後のところで
これまでで最もおいしかった虫は?
と尋ねられた三橋博士はこんなふうに答えておられる。
セミの成虫になる直前の幼虫です。
断言している。
私、思わず
おお!
と声を出してしまった。
だって、この言葉、去年の夏あたりに書いた「セミを食べる話」(白ゼミ)で引用したアリストテレスの言葉の通りなのだもの。
忘れておられる方もいらっしゃるかもしれないから、もう一度引用しておけば
蛆は地中で生長して「セミの母」(蛹)になるが、外被が破れてはがれる前のこの時期のものが一番うまい。
《 アリストテレース 『動物誌』 (島崎三郎 訳)》
ね、ぴったり符合してるでしょ。
なにしろ、博士はこんな「事典」を出すくらいの人ですからね、まちがいなく、昆虫食の天下無双の権威に決まっております。
そんなお方がお墨付きを出している。
まちがいない。
セミの幼虫が一番うまい。
でも、続けて博士はこんなふうにも言っている。
高温で空揚げにするとパリパリしてエビに似た食感です。
うーん、生では食べないらしい。
まあ、それはそうか。
ところで、同じ日の夕刊には、日本海でズワイガニの解禁日と報じられておりました。
金沢の家々では、今年も、もうそんなカニをお食べになられたんでしょうな。
まあ、普通、セミよりはカニ、だわな。