凱風舎
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めずらしいおかね

 

  今は 二月 たつたそれだけ
  あたりには もう春がきこえてゐる
  だけれども たつたそれだけ

 

    ― 立原道造 「浅き春に寄せて」 ―

 

 

 今日も一日部屋におりました。
 まったくわれながら、自分の出不精には呆れてしまいます。
 本を読んでいたら、昼過ぎ、学校が早く退けたまきちゃんが来て、お勉強をはじめました。

 突然、まきちゃんが
 「あっ」
というので顔をあげたら、社会の問題に出てきた沖縄の守礼門の写真を指さしています。
 「うん?」
と聞くと、こんな話を聞かせてくれました。

 

 なんでも、彼女が小学校の2年生ぐらいのとき、叔母さんからお年玉をもらうとき
 「中にめずらしいお金がはいってるわよ」
と言われたそうです。
 それを袋から出してみると、たしかにそれはまきちゃんがそれまで見たことのないお札(2000円札)で、裏には何だか読めない字が書いてあります。
 でも、小学生のまきちゃんは、それを、てっきり、叔母さんが落書きしたものだと思いました。
 そして
 「叔母さんは、落書きのあるお札だからめずらしいお金って言ったんだ!」
と思いました。
 だから、まきちゃんは自分も真似してお札に落書きすることにしました。
 で、ほかのおじさんからもらった千円札にボールペンで大きくこう書いたそうです。

   とってもめずらしいおかね

 それを買い物から帰って来たお母さんにイバッテ見せたところ、たいへん怒られたそうです。

 ふふふ、それは怒られますな。
 ちなみに、このお札は、お母さんがまだとっておいてあるそうです。

 そうそう、まきちゃんたちの受験勉強も、あと、二日です。