凱風舎
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ことり

 

 

 小鳥がうらやましい。
 幹や根のことを考えるのは
 避けて
 満ち足りて一日中ぶらんこに乗っているすばしこい生き物、
 枝分かれした一番先で歌っている。

 

  ― パウル・クレー 「ある木を見て」 (『クレーの詩』 高橋文子 訳)―

 

 午後、ゲーテの『イタリア紀行』を読んでいたら、ひさしぶりにもとよしさんがやって来た。
 「もとよしさん」というのは、《とんことりさん》のことである。
 これまでの作品をちゃんとした写真に撮って、パソコンで印刷してカタログみたいにしたのができたからと、見せに来てくれたのだ。
 どれもなかなかたのしい。
 「いやあ、なかなかいいなあ」
などと言っているところへ、和紗ちゃんがいつもより早く塾にやってきたので来たので、彼女にも見せてあげる。
 ヤギコにも見せてあげる。
 ヤギコは何にも言わないが、和紗ちゃんは
 「えっ! スゴーイ! 
  えっ! タノシイ!」
と言いながらファイルのページをまくっていく。
 和紗ちゃんは、よほど感激したらしく、もとよしさんが帰った後、
 「先生ッ。
 私が何か創る前に、先生、ゼッタイ、死なないでくださいねッ」
などと言う。
 まあ、私、そんなに早くは、死なない。(と思う)。

 もとよしさんが
「そう言えば、ブログもはじめたんですぅ」
と言うから、見せてもらったら、これもとてもたのしい。
 紹介の記事を山田さんに書いてもらったから、そこから見ることができるので、のぞいて見てほしい。
 (この記事の一つ前にある「猫は毛糸で・・・」という記事です)

 いかにも、もとよしさんだ。
 絵も、写真も、文章も、みんなもとよしさんだ。
 ページを開いて読んでいると、きっと、心がほわほわする。
 あんなの、真似しようたって、できやしない!
 なんなんだろう。
 スゴイなあ! 

 今日の引用は『クレーの詩』。
 もとよしさんが
  《幹や根のことを考えるのは
   避けて》
いるとは思わないが、でも、「とんことり」は、いつも小鳥のようにたのしそうだからね。

 ところで、気が付けば私の塾のちっちゃな「小鳥たち」も、明日が公立高校の入学試験。
 カッターで鉛筆を削って、
「明日は、そのとんがった先に、わしの《正解念力》を飛ばすからなっ」
と言って、一本ずつ渡してあげたら、みんな大事そうに筆箱にしまってた。

 みんな、明日は、これまで頑張って来た力をちゃんと出すことができますように!