凱風舎
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シャーマニズム 

 

 国家とは、ある一定の領域の内部で――この「領域」という点が特徴なのだが――正当な物理的暴力行使の独占を(実効的に)要求する人間共同体である。

 

   ― ヴェーバー 『職業としての政治』 (尾高邦雄 訳) ―

 

 

 今日は月曜日なので、お昼からの放送大学は見ない。
 お題は「身近な統計」。
 まあ、統計なんぞ、お勉強しなくってもわかる、ってもんだ。
 なんせ、私、こないだこの通信に2011年度版の「地理統計」を引用したほどの男である。
 
 というわけで、天気予報が終わってもチャンネルを変えずにNHKのニュースを見てたら、読んでるニュースの途中で突然、北朝鮮の金正日総書記が死んだと言う。
 おっ、と思っていたら、テレビに例の北朝鮮のニュースのおばさんが映る。
 黒い服を着ている。
 久しく見なかったせいか、妙なことになんとなく懐かしい気がする。
 もっとも、もちろんその顔にあのいつもの満面ホジャホジャの笑みはなく、声涙共に下る、みたいな感じで原稿を読んでいる。
 どうやら、本気で悲しんでいるらしい。
 うーん、そうなんだろうな、と思う。
 そこに電話が鳴って、勝田氏から。  
 「ニュース、見とる?」
 「見とる」
 「たいへんやねえ」
 「たいへんや」
 「韓国も従軍慰安婦の銅像を建てとる場合じゃなかろう」
 「ないねえ」
などという会話を交わしたあと、そのままニュースを見る。
 ニュースは45分間続き、そのあと連続テレビドラマ「カーネーション」というのになる。
 見てたら、主人公が黒い服を着ている。
 父親が死んだらしい。
 通夜の場面である。
 まさか北朝鮮に合わせたわけでもあるまいが、妙な符合だわな、と思って見ていた。

 その後また始まったテレビのニュースも代わり映えがしないので、〈統計通〉の私は地理統計の北朝鮮のところを見ることにする。

        面積(万㎢)    人口(万人)    GDI(億ドル)  一人当たりGDI(ドル)
  北朝鮮   12,0        2,405      ―            ―
  韓  国    9,9        4,861      9,666       19,830
  中  国  959,8      133、211     48,158        3,620
  日  本   37,8       12,770     48,303       37,870

 統計はわかりやすいな。
 数字をみれば東アジア4カ国の姿がちゃんと見えてくる。
 (同じ数字でも単位が 「ベクレル」とか「ミリシーベルト」となると、何が何だかさっぱりわからないんだが)
 ところで、表の末尾の〈宗教〉のところを見ると、北朝鮮は

   シャーマニズム 15%  天道教 14%

と、書いてある。
 ほんまかいな。
 ということは、金正日の葬儀もシャーマニズムでやるのであろうか。
 もっとも、死者を葬る儀式とは、それがどんな宗教であれ、シャーマニズムの要素がないものなんてないに決まっているのだが。

 いうまでもないが、『職業としての政治』というより「《家業》としての政治」であった彼の独占した〈物理的暴力行使〉が「正当(まっとう)な」ものであったとはとても思えない。